国際紛争と心理学
大規模なトラブルに対して、心理学の可能性

ラグナロク 国際紛争と心理学
love 北のワークショップからlove
■ 社会的な葛藤。その規模が、どんどん大きくなった最たるものは「戦争」です。
国際平和活動に、全力を傾けた心理学者の事を書きながら、国際紛争の場に
おいて 心理学が、どの様な役割が果たせるかを考えたいと思います。
臨床心理学者として活躍したC・ロジャーズという人物は、後年に個室での臨床
活動を離れて「ベーシック・ エンカウンターグループ」という活動をはじめました。

ベーシック・エンカウンター・グループ
エンカウンターとは「出会い」を意味します。10人前後の参加者の集団を作って
ファシリテーター(促進者)と呼ばれる心理学者が1人つき、側面からプロセスの
支援を行います。
この集団活動はプログラムもテーマも設けず、全て参加者の自発性と主体性に
よって進行
します。一定の目的と役割を持つ従来の「集団目的」ではない為に、
「何をしたらいいのだろう」と戸惑うでしょう。けれど、役割や目的がないからこそ
しがらみも無く通常の人間関係よりも率直に、直接的に会話する事が可能です。
ファシリテーターは、その関わりを通じて参加者が日常では得がたい発見をする
様に支援します。

■エンカウンターグループを発展させると、数十人・数百人の参加する「パーソン
センタード・ ワークショップ」と呼ぶ様になります。ロジャーズは、世界各国でこの
ワークショップの場を設け、 国際紛争の解決へと寄与しました。

■1973年。北アイルランドはプロテスタント教徒とカトリック教徒の数年にわたる
激しい争いが続いていました。そこで、両派の教徒9人から成る、エンカウンター
グループをロージャーズは設置します。憎悪と不信が渦巻いているグループが
お互いの率直な気持ちを オープンに語れる様にしたのです。
そうして「教徒としてではなく一個人として」語る事で 、お互いへの理解が深まり
16時間ほどで根強い憎悪が和らいでいきました。

■さらに、参加者たちはその後も自発的に集い、語り合い続けました。対立して
いた2つの宗教派閥が、近年では率先して討論会を行い数千人という大規模な
ワークショップも開かれました。

まとめ「心理学の可能性」
この様に、心理学の試みが現実に力を発揮されるのは、まだ遥か遠い先の事
でしょう。 けれど、小さな面会室で臨床心理学の実験が行われてから1世紀で
国際紛争の解決を試みるほどに大きく発展した訳です。この心理学の可能性に
希望を抱いて、今後も学んで行きたいと思います。