リストカット
煮えたぎる気持ちを放出する、歪んだ手段
何の関連もないアイコン 自傷行為の一種

■自らを傷つける行為を「自傷」と言いますが、特に刃物で手首を傷つける
行為の事を リストカット(wrist-cutting syndrome)と呼びます。今からおよそ
45年前に アメリカで大流行し、それが世界各国に広がって現在に至ります。

リストカットに走るきっかけとして、摂食障害や引きこもり、薬物乱用等による
焦燥がありますが、これら全ての大元には 境界例が眠っている場合が多い
様で、リストカット者全体の8割に上ります。 その他、統合失調症による錯乱
状態も当て嵌まりますが、これは幻覚によって引き起こされる為にその傷は
深く、致命傷になる 場合も少なくはありません。

また、人前で公然と行う 場合は稀で、 主に自室にこもっての行為となります。

「リストカットとその背景」

(1)自傷行為全てに言えますが、その原因は境界例と同じ分離不安です。
幼少から母子関係が不安定であると、「親離れ」「子離れ」が出来ないまま
成長してしまうので、 成人しても「母親の愛」を渇望してしまうのです。
つまり「大人になっても乳幼児の様に母親と一体化」を 求めますが、 それが
叶わない為に 「愛情が得られない」と感じてリストカットに走ります。

(2)境界例には「見捨てられ恐怖」が顕著です。きっと私は両親にも誰にも
愛して 貰えない。そんな不安に押し潰されそうになる時、両親や周囲の愛の
再確認をすべく リストカットをして、試すのです。これは、計算高く狡猾に見え
ますが、実は、深く傷つき 居た堪れない為に自傷行為をせずにはいられない
というのが本音でしょう。

(3)手首を、自分を傷つけた両親に見立てて切りつける事もあります。これは
「手首の人格化」と呼び、怒りや嘆きを刃物としてぶつけます。

「手だって命」
リストカットや自傷行為とは、「自分は周囲に受け入れられているのだ」という
気持ちを持つ事が出来れば、必ず回復する 病です。
社会や、取り巻く周囲には「退廃美という世界」によって「自己陶酔である」等
偏見が生じているのは残念な事です。
行為そのものではなく、その人の家庭環境の背景を見つめて家族全体で回復
していく事と 偏見を無くす社会が回復への鍵となります。

「あなたの手は生きているの。手だって生きていたいの。そんな手をこれ
以上 傷つけないで。 あなたと共に生きているし、あなたに一生、すがって
生きるしか ないの。そんな手を見捨てないで」

私はよくリストカット者に、そう語りかける事にしています。



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